キャリア

2026年03月13日

教育と分業を徹底し、若者が魅力に感じる業界を作っていきたい

建築設備施工会社(サブコン)で10年間、施工管理の仕事を経験した後に独立し、株式会社PFCを創業した松葉竜也さん。会社員時代から携わっていた図面(施工図)作成と現場経験を強みとし、メイン事業である建築設備施工図の作成や、コワーキングスペースの運営など多角的な活動を展開している。経営者としても挑戦を続ける松葉さんに、「教育」と「分業」の重要性や、独立後に得たメリットや苦労、今後のビジョンなどについて語ってもらった。

目次

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※インタビュー前に、ご自身を形成したものや人について教えていただきました

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サブコンで10年間、施工管理を経験

私は、強い志を抱いて建設業界に足を踏み入れたわけではありません。大学での専攻は近しい分野であったものの、縁があって建築設備施工会社(サブコン)に就職し、入社して初めて、自分の仕事が設備関連の「施工管理」という現場仕事であることを知りました。私が重視していたのは「入社した会社でいかにやり遂げるか」という点です。どの企業、どの仕事であっても、その組織の一員として貢献したいという思いを抱いていたのです。

私が入社した当時の建設業界は、現在から見れば「ブラック」と呼ばれてもおかしくないような過酷な労働環境でした。しかし事前のイメージがなかったことが逆に功を奏し、厳しい環境に対しても過度な抵抗感を持つことなく、むしろ「これが当たり前か」と受け入れることができたのだと思います。そんな中、私は入社1年目にしてある決意を固めました。それは「10年後、自分自身や部下が有給休暇を使い、しっかりと休める環境を作る」というものです。この目標が、日々の激務をこなすためのモチベーションとなり、後の独立や現在の経営理念である「分業と効率化」へとつながる重要なマイルストーンとなりました。

施工図を作成する仕事の面白さを知った

キャリアスタート時に担当したのは現場の施工管理でしたが、右も左もわからない新人が、いきなり経験豊富な職人たちを指揮する「現場監督」になるのは難しい。そこで私は、とにかく手を動かし、職人さんや先輩に付き従って現場の動きを覚えていきました。虚心坦懐に教えを乞い、現場のリアリティを肌で感じることで、監督としての説得力を体得していったのです。

2年目に入ると、現場の常駐管理を任されるようになりました。また、現場を回す立場になると同時に、1年目からCADに触れていた経験が活き、自ら図面(施工図)を描く業務も本格化しました。1年目から少しずつ図面に触れてはいたものの、現場の最前線で「どう造るか」を考えながら図面を描く経験が、技術的な深みをもたらしてくれたのです。現場管理と図面作成を並行して行う日々の中で、施工図を作成する仕事の重要性と面白さを知り、徐々にのめり込んでいきました。

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独立したことによるメリットと苦労

サブコンで施工管理を10年間経験した私は、2020年に独立を決意しました。もともと独立心はありましたが、大きな契機となったのは親会社の設立による組織の変化でした。自身のキャリアを見つめ直した際、会社への愛着はあるものの、転職ではなく「個人の道」を選ぶことが最善だと考えたのです。10年間、現場で培った自信と、組織の中でやりきったという達成感が、次なるステージへの背中を押してくれました。独立を告げた際、会社からは慰留されましたが、最終的には私の意志を尊重してくれ、「うちの仕事を請けてほしい」と声をかけてもらえる関係性を築けたのです。この協力関係があったおかげで、独立するハードルは大幅に下がりました。

独立して得た最大のメリットは、自分の実力がダイレクトに評価と報酬につながる点です。ただその一方で最初の1年間は、3カ月後に仕事があるのかさえ確信できない状況で、不安と向き合う日々でした。しかし1年経ち実績が積み上がると、徐々に見通しが立つようになっていき、2020年に「株式会社PFC」を設立しました。現在は建築設備施工図の作成事業を中心に、コワーキングスペースの運営などの活動も展開しています。当社の核となるのは、設計図面を現場で実際に使える3Dの「施工図」に落とし込む作業です。これは現場監督が行う多忙な業務の一部を切り出し、専門特化させたもので、私自身の経験に基づき、現場の負担を軽減するサービスを提供しています。

当社の最大の強みは、スタッフが現場経験を有している点にあります。現場の人間は常に忙しいため、指示も簡潔になりがちですが、現場の苦労を理解していれば「一を聞いて十を知る」立ち回りが可能です。単なる「図面屋」ではなく、現場の「チームの一員」として機能することが、顧客からの信頼につながっていると自負しています。100人が描けば100通りの図面ができ、唯一の正解はありません。しかし、コスト、工数、安全性、施工のしやすさといった多角的な視点から、いかに最適な答えを導き出すかが重要です。私にとってCADで図面を書く作業はゲームより楽しいもので、専門知識を駆使して解を導く創造性に魅力を感じています。

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技術を効率よく継承するために教育が重要

経営者として私が最も注力しているのは「教育」です。かつての建設業界は「背中を見て覚えろ」という世界でしたが、それでは今の時代、技術を効率よく継承できません。そこで私は、現場経験者が持つ密度の高い情報を、いかに短時間で新しい世代に伝えられるか、その組織的な仕組み作りに取り組んでいます。分業化を進め、図面に特化した教育環境を整えることで、新しく業界に入った人たちが挫折せず成長できる土壌を耕しているところです。

自分の価値観を形成するうえで影響を受けた人物が二人います。一人は、技術と若手の教育に情熱を注いでいた前職の上司です。長時間議論を重ねる熱心なその姿に触れ、感銘を受けました。もう一人は、経営者である叔父です。叔父は、法人化に踏み出す際に悩んでいた私の相談に乗って背中を押してくれ、考えを整理するきっかけをくれました。「技術面」と「経営面」におけるそれぞれの恩師の教えが、現在の私を形作っています。

私は仕事とプライベートのバランスを重視しており、大切な予定のため前週に仕事を詰め込むなど、計画的な休みを確保しています。独立前から理解を示してくれた妻は最大の理解者であり、背中を押してくれる存在です。家ではペットの犬やウサギとも触れ合い、守るべき場所があることが私にとって精神的支えとなっています。リフレッシュの方法としては、全国各地を巡り、その土地の食べ物やお酒を味わうことを特に好みます。友人と神社仏閣を訪れることも多く、2025年に訪れた伊勢神宮も、私にとって大切な思い出となりました。

建設業の大きな魅力は「身近さ」

衣食住の基盤を支える建設業の魅力は「身近さ」にあると感じます。自分が関わった建物が街に残りますし、知識が日常と結びつく面白さがあります。他方、業界の課題は分業化と教育不足だと思います。人手不足が叫ばれる中でも若者は一定数入ってきますが、教育体制が整っていないためなかなか定着しません。私の今後の目標は、教育と分業を徹底し、若者が魅力に感じ、長く働ける環境を作ることです。今後3〜5年で当社の組織を拡大し、派遣事業も含めてより多くの現場をサポートできる体制を整えたいと考えています。建設業という人々に身近で不可欠な仕事を、より持続可能でクリエイティブなものに変えていくべく挑戦を続けます。


※2026年2月に取材した内容に基づき、記事を作成しています。

この記事でキャリアした方のプロフィール

  • 氏名:松葉 竜也(まつば たつや)氏 
  • 所属企業名:株式会社PFC
  • 従業員数:約10人
  • 職種:代表取締役/施工図作成代行
  • 年代:30代

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