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2026年02月18日

江戸東京博物館が「宙に浮く要塞」になった切実な理由

目次

あの巨大な白い建物は、ただ奇抜なだけではない。見る角度によってはロボットや要塞のようにも見える、江戸東京博物館。実はあの形には、貴重な宝を災害から守るための、設計者の執念が隠されていた。「なぜあんなに高いところに部屋があるのか」。その謎を解くと、この建物が技術で歴史を守ろうとした「箱船」であることが見えてくる。

水害の地で宝を守り抜くための構想と壁 

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設計を手掛けたのは、建築家の菊竹清訓だ。彼がこのプロジェクトで直面したのは、建設地である墨田区の地理的なリスクだった。ここは海抜が低く、ハザードマップでも浸水が懸念されるエリアである。もし洪水が起きれば、展示される貴重な歴史遺産はひとたまりもない。菊竹は考えた。「大地から切り離すしかない」。こうして、巨大な建物を宙に持ち上げるという、前代未聞の構想が動き出した。

巨人のような高床式を実現した技術という武器

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解決策は、まるで神社の高床式倉庫を現代版に進化させた「スーパーストラクチャー」だった。菊竹の初期作品「スカイハウス」の思想を受け継ぎ、常設展示室を地上から遥か高い4階以上に配置したのだ。柱と梁を組み合わせた骨組みは、あたかも巨人の筋肉のように、重たい展示室を支えている。

証明された正しさと受け継がれる現在

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その設計思想の正しさは、皮肉な形で証明された。菊竹が設計した別の博物館(川崎市市民ミュージアム)では、地下収蔵庫が台風で浸水し、甚大な被害が出たからだ。対照的に、空中に逃げた江戸東京博物館の構造は、文化財保護の理にかなっていた。2022年から始まった大規模改修を経て、2026年3月31日、この要塞はリニューアルオープンする。老朽化対策を終え、その強靭な足腰はさらに磨き上げられた。

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奇抜に見えるあの形は、伊達や酔狂ではない。「守る」という強い意志が形になったものだ。都市の災害リスクが高まる今、江戸東京博物館の姿は私たちに静かに語りかけている。技術とは何か。それは、過去の記憶を未来へ安全に運び届けるための、希望の箱船なのかもしれない。

江戸東京博物館

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所在地 東京都墨田区横網1-4-1
階数 地下1階・地上7階
敷地面積 29,293㎡
延床面積 48,512.95㎡
建築面積 17,562㎡
着工年月 1989年6月
竣工年月 1992年11月

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関連企業

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発注者 東京都
設計者 菊竹清訓建築設計事務所
構造設計者 松井源吾+ORS事務所
設備設計者 株式会社森村協同設計事務所
施工者 鹿島建設株式会社 ほか

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技術・工法 

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構造 鉄骨鉄筋コンクリート造
高さ 62.2m
規模 地下1階・地上7階

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